分院設立, 医療, 医療法人設立, 行政手続き

【医療行政ブログ】分院設立などでの「必要書類」とは

あっという間に、2月も1/3が過ぎ去ってしまいました。新規医療法人設立をご希望の、都内在住の先生方におかれましては、そろそろ3月15日に向けての準備を開始されていることと存じますが、本日はあえて分院設立についての注意点などを記載させていただきます。

分院を作りたいとお考えになるきっかけには、極端な話2つの理由があると思っています。1つは、本院の経営が順調で、余剰資産が出来てきたことと併せて、分院経営を任せるに値する先生との出会いがあった=これは良い機会だ!というきっかけ。もう1つは、残念ながら本院の経営があまり順調ではないけれども、本院よりはるかに良い立地、条件の診療所が見つかったから、収益ベースとしてそちらを柱にするために投資する、というきっかけです。

1つ目の流れにおいて、分院設立の手続きを進められる場合は、まず資金に余裕があるので予算書上の赤字が無く、行政として受け入れやすい内容のものを問題なく作成することが出来ます。我々としても、たいしたテクニックを使わずに指定された書類を準備して分院設立申請を行い、余裕を持った申請に臨むことが出来ます。

しかしながら2つ目の理由で分院を設立される場合には、本来必要とは言われていない書類をいくつか作成・取り寄せし、また調整をしたうえで申請をする必要が出てきます。例えば、分院設立にあたって銀行に対して追加融資を依頼していても、正直なところ本院が赤字ではどれくらいの額の融資が下りるかわかりません。多くの先生は「額を確定できないと言われた、どうしよう!」とご心配されますが、そもそも融資はそういうものですので、大した問題ではありません。しかしながら、現実的な手続きとして、融資は分院設立が認められるめどが立ってからでないと本決まりにならないケースが多いので、行政への申請時点においては「融資申請中」という形での申請をせざるを得ず、行政としても「で、いくら融資されたの?」というところを追い続けることもあり、なかなか結論が出ないということになりかねません。それくらいであれば、理事長またはご関係の方々の個人貸し付けを法人に対して行ってしまったほうが、間違いのない数字を出すことが出来ることになります。(その分、書士が作成する書類は増えますが。)何より、行政以外の誰かのペースによって申請日程を左右される、という面倒なことが減ります。

行政からは、間違いなく「本院が赤字なのに、2つ目を作るなんて!」という突っ込みが入ります。突っ込みを受ける前に、1.本院を廃院に出来ない理由 2.分院だけでの収益見込み 3.結果として法人が良い方向に回転するであろう目測 を文書化し、提出します。これは必須添付書類ではなく、行政の思いを汲み取った書類の一つなのですが、本来非営利でありながら黒字経営を求められている医療法人が赤字経営であること自体、どこかしらに問題があり、その問題を解決するための分院設立である(少々こじつけになることが多いですが)ことを、行政が納得できるように説明できれば、分院設立の認可は下りやすくなります。

都道府県が出している医療行政に関する手続きマニュアルには、型通りの必要書類しか記載がありません。その書類をまとめたうえで、状況によって「自分が行政官だったら突っ込むだろうな」というポイントをあらかじめ整理し、そこを補填する書類を準備して提出することで、その後の補正回数が減り、また行政の納得度も上がるのは間違いありません。

無駄な時間、手続きを使わないために、事前にどれだけ手を打つか。このあたりに、行政書士の腕の差が見えるのではないかと思っています。

行政書士によって得意分野は分かれます。少しでも専門的な話を最初からすることが出来ることが、その後のロスタイムを減らす第一歩になると思いますので、医療に関してはどんな些細なことでもお気軽にご相談いただけましたら幸いです。