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医療行政ブログ【持ち分あり医療法人の落とし穴】

気づけばもう1月も終わりが近づいてきました。油断すると、すぐに記事の間隔があいてしまいます。今年は頑張ります!

さて、ここのところご相談いただくことが増えた内容に、医療法人の役員変更があります。

医療法人は、株式会社で言うところの株主にあたる「社員」と、社員であるかどうかを問わない「役員」、そして各々が構成する「社員総会」と「理事会」の決議によって、法人の運営方針が決まります。

現在新規で設立される医療法人については、持ち分(株に相当する、法人の運営権に関する割合を数字にしたもの)無しの法人しか設立できません。つまり、社員が株主、社員総会が株主総会に例えられる割には、その株自体が発行されていないということになります。

しかしながら、古い時期(2007年以前)に設立された医療法人には、持ち分があります。これは、法人に対する出資額の比率に応じて、出資者が払戻請求権を持つ、というものです。実は、ここのところ多くなっているご相談は、この持ち分に関するものです。

出資者(持ち分所有者)が法人に対して発言権を持つのは、社員であるときです。ですので、様々な事情により社員や役員が変更された場合、法人に対する発言権自体は消滅する可能性があります。ただ、この出資額に応じた払戻請求権だけは、相続対象ともなる、永続的な権利です。これは、権利所有者が放棄するか、権利を実行しない限り、消滅しません。

一例を考えてみましょう。Aさんが持ち分ありの休眠法人に対して出資を行い、再度動かし始めたとします。再度動かすにあたっては、様々な経費が掛かっており、社員や役員も全てA氏の関係者でまとまっています。A氏は、法人に対する権利(社員や役員変更、事業運営等)について移行するという内容での契約書を、前理事長と交わしました。

10年ほどたってから、B氏から法人に連絡が入りました。この方は前理事長のご遺族で、同年亡くなった前理事長の遺産を税理士と共に整理している中でのご連絡でした。曰く、「父が法人に対して出資した分の払戻を行ってほしい」という内容です。

A氏は驚きます。法人に対する権利移行を行った以上、すべての権利はA氏に移行しており、「自分が唯一の株主だ」と信じていたからです。

慌てて過去に交わした書類を確認したところ、前理事長が「払戻請求権」まで譲渡したという一文は当時の契約書内にありませんでした。前理事長の出資額は3,000万、A氏の出資額は5,000万です。現在医療法人は順調に利益を増やしており、前年度決算においては2,000万の利益となっており、現時点における翌年度繰越金は5,000万となっています。そのため、B氏に対しては1,875万を法人から払い戻す必要が出てしまいました。

持ち分はあくまで「法人に対する出資比率」です。この出資のタイミングは、指定がありませんので、法人設立時からの出資が総額としていくらになっているのか、そして払戻等がいつなされているのかといった、財務状況をしっかりと把握する必要があります。

現在、多くの持ち分あり医療法人では、設立者が高齢化し、このあたりの理解が大変厳しい状態になっている、またはうやむやなままお亡くなりになるというケースが発生しています。運営を引き継いだ法人においても、そのあたりを理解していなければ、後々見ず知らずの人から払戻請求権を行使されてもおかしくないのです。

持ち分あり医療法人様におかれましては、出資額リストをしっかりと整えておかれること、また安易に税理士先生を変えず、継続的な話ができる環境を整えられることを、心からお勧めいたします。

また、法人を引き継がれる方の中には、医療法にあまり詳しくない方も散見されます。医療法をお勉強されないまま、間に入ることの多い無資格の「医療コンサルタント」の言うなりに法人に対する出資を行ってしまうと、思いもよらない事件に巻き込まれることもある、ということをご理解いただく必要があります。

とはいえ、どうにもわからなくなってしまった際は、当方においてどこにネックがあるのか、といった現状整理を行わせていただきますので、お気軽にご相談ください!