ご無沙汰した分を取り戻すべく、連続投稿です。
医療法人が何かをしようとすると、何でもかんでも許認可や届け出が必要です。たとえマンションの隣の部屋に診療所を移すのでも、事前に都道府県に対して定款変更認可申請を行い、2~3か月かけて認可証を頂いてから、保健所や厚生局の手続をしなければなりません。
今回頂いているお話は、諸事情による理事長変更に伴い、現在医療法人が運営している診療所を管理者(医師)の個人運営にし、医療法人は他の先生(新理事長)が運営している診療所を法人立の診療所にする、という手続きです。
これは厳密には「診療所廃止」及び「診療所開始」の同時手続ということになりますが、タイミングを合わせることさえできれば、診療所及び本部移転、という一連の流れにすることも可能です。
この場合一番問題になるのは、保険診療の遡及を各々の診療所においてできるかどうか、という点になります。保険診療の遡及は、いくつかの審査ポイントがあり、そこに合致するかどうかで可否が分かれます。本来の移転においては、前診療所がそれまでに行っていた保険診療実績を基に、同一開設者が運営する診療所であり、以前の診療所を廃止するということを保健所提出書類によって証明して遡及許可を受けますが、今回のケースにおいては、①現在の診療所において行っている保険診療は新たに個人立となる診療所に対して、同一立地において同一内容の診療を行い、診療録を法人から個人に引き継ぐという契約書によって証明 ②移転先の保険診療は、新理事長となる先生が現在行っている保険診療の許可を、法人に診療録毎引き継ぐという契約書によって証明 の2段階で証明することが出来れば、どちらの診療所も保険遡及を受けることが理論上は可能になります。
ただし、移転においてはその前段階である定款変更の時点で、「移転することでそもそもの医療運営が改善されるという証明が出来るか」という点も、クリアすべきポイントです。今の診療所は赤字だから移転します、という理由である場合、移転にかかる費用はどこから捻出するのか、また既にある赤字をどう解消するのかを、予算書という架空の数字を扱う書類上ではあっても証明する必要があります。またそれに伴い、添付書類としては前年度(最新)決算書類を求められるケースも多いため、過去の数字まで簡単に「黒です」と言い切ることは出来ません。
先生方により、診療所運営の背景は大きく異なります。一概に移転といっても、簡単には定款変更認可が下りないケースも考えられますので、その場合は一旦現行院を廃院扱いにして法人自体は一時的な休眠法人とし、間を開けずに資金的組織的問題をクリアにしてから別場所にて開設、という手続きを踏んだほうが良い場合もあるでしょう。(ただし、休眠法人は都道府県における評価が大変下がりますので、扱いや期間に慎重な扱いが求められます。)
様々なリスクを考えながら、先生方とともに最善の道を探れるのは、やはり多くの医療法人様のケースに慣れた行政書士の強みと感じます。是非先生の大切な財産である診療所、医療法人を守るために、お気軽に医療を専門とする行政書士をご活用くださいませ。