医療, 定款変更, 行政手続き

医療行政ブログ【移転をお考えになるときは】

こんにちは。行政書士の吉田です。

本日のお題は「診療所の移転」です。
診療所新設の際はもちろんですが、建物が古くなったり、
立地の問題などにより、診療所の移転を検討される必要が出ることは
ままあることと思います。

定款を変更する必要のある事項ですので、まずは都道府県、
そして保健所への届出が必要になってまいりますが、 この際の添付書類として必須なのが、新しい診療所に関する 建物(場合によっては土地も)の登記簿、そして賃貸借契約書です。

通常、賃貸借契約書上の面積は、登記簿上に登記されている面積より
小さくなります。
これは、少しお考えいただけばわかることで、仮にワンフロアを お借りになる場合であっても、共有スペース(エレベーターや 避難用階段、配電盤の収納スペース等)については個別の 賃貸借契約面積からは抜いて契約することが多いからです。
こちらについては、説明のつく面積の差異ですので、通常 問題になることはありません。

しかしながら、時として世の中には「登記されていない物件」 というものが存在します。
建物を建てた時には駐車場で、そのまま建築確認を受けて 登記を固定したけれど、その後「内装工事の延長」という形で 壁を作り、そのまま使用していた場合等がこれにあたります。
その他には、ただの屋上だったスペースにプレハブを建て、 利用し始めていたというケースもあります。

この物件を、「これまで他の会社が問題なく会社事務所として 利用していたから大丈夫だ」という安易な思い込みで賃貸借契約し、 いざ都道府県や保健所に定款変更申請を行うと、 “登記面積の方が賃貸借契約面積より小さい”という逆転現象が 起きてしまいます。

これは医療法等に定められているというわけではありませんが、 医療機関は、公的性格を持ち、安定的な運営が求められるもの ですので、登記されていない場所に設置する、ということは 認められません。
「医療機関を作るなら、それくらい当然でしょ?」と思われて しまう類のポイントです。
また賃貸借を仲介する不動産会社さんは、意外とこのあたりを ご存じないことも多いです。

建物の登記は建築確認がベースになりますので、この登記面積を 書き換えるためには再度建築確認を受ける必要があります。
これは、建物の全棟検査が必要になる(構造チェックも必要なので、 壁をはがす必要がある場合もあります)ので、大家さんは 大きな出費になりますし、実際に登記が完了するまでには とてつもなく時間がかかります。

ですので、移転や分院開設で新規物件をご検討される際には、このあたりの書類チェックに長けた行政書士に、本契約前にご相談されることをお勧めいたします!