医療, 福祉

医療行政ブログ【医療法人の性質】

こんにちは、吉田です。

医療法人を設立される場合、多くの先生方はそのメリット・デメリットを税制的観点、融資の観点等、お金の絡んだ視点としてお考えになることと思います。これは、現実的な側面としては正しいのですが、近年増えている自由診療を主体とする診療所様が医療法人を立ち上げられる際などに、失念されがちな点があります。

医療、基本的に国が管理している事業です。そのため、国(厚労省)及びその窓口たる都道府県としては、保険点数による診療報酬収益をベースにし、医師が個人設立した診療所の発展及び永続性を念頭に、医療法人の成り立ちを定めています。また自由診療のみの診療をされている診療所の場合、出資者(企業)がいらっしゃり、院長たる管理者先生が被雇用者になっているケースが0ではありません。【営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、第四項の規定にかかわらず、第一項の許可を与えないことができる。(営利目的の診療所等開設は認めない。)】と定めた医療法第7条第6項にのっとり、税理士先生がうまく処理してくださっているとは思うのですが、あくまで個人の裁量において、特定の企業(出資者)との金銭授受のない状態で運営するのが、診療所の基本であるという国の発想から考えると、若干ずれたところに基本が置かれてしまっています。

こういった場合、税理士先生と相談のうえで、出資者の方には拠出者として社員に入って(法人も社員になることは可能ですが、営利関係があることが明白な場合はNGです。)いただいたり、1~2年申請を待って管理者先生の確定申告を出資者や企業の背景が見えないよう整えたうえでの申請を行ったりするわけですが、税理士先生や私共行政書士がいくら申請時の書類を整えて法人化が認められたとしても、その後医療法人を実質的に運営される方々、そして管理者先生の意識が変わらないことには、その後の法人運営がうまくいかないケースも出てきます。

役員変更一つとってみても、実質運営者がバックにいらっしゃる企業の方でいらっしゃる場合、「そもそも法人運営を行うのに非営利ってどういうことだ?」と混乱してしまわれて(企業は営利が当たり前なので、「非営利」と言われても感覚自体が馴染まない方が多いようです)、事前準備やご説明、ご理解いただいた上での人選に一苦労となることもあります。

医療法人という組織運営を所管しているのが国であり、窓口たる都道府県に対して「非営利」アピールを行いながら法人運営を行って行くためには、それなりの覚悟が必要になってきます。「自由診療だから」「法人になったから」大丈夫、ではなく、国の方針にのっとって現状ご自分たちの診療所がどう見られているか、という視点を持ち、医療法及び厚労省指針と実際の運営方針の間にずれが無いかを折々確認されながら進められることをお勧めいたします。

ご自身ではなかなか判断がつかない場合は、いつでもご相談に乗らせていただきますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。