医療

閑話休題【行政書士って何?】

こんにちは。吉田です。本日は医療や福祉の本筋とはちょっと離れたお話です。

事務所を立ち上げてからというもの、友人たちに言われる最も多い言葉が、「おめでとう!ところで行政書士って何をする人?」というものです。尋ねられるたびに、「行政機関に提出する書類作成代行と提出代行、かな?」と答えていますが、それで良いような何となくそれだけでは無いような。。。という思いになります。

行政書士が行う業務の大筋のところは、「行政機関に提出する書類作成代行と提出代行」で間違いありません。ただ、経験を積む中で感じているのは、「代行の前と後」ということが一番大事なのではないか、というところです。

医療や福祉といった、所謂社会的弱者に直結するところを専門にしているからこそ感じるのかもしれませんが、組織が「何か事業を始めよう」「事業形態を変えよう」「必要な書類を提出しよう(物事を終わらせずに前に進めよう)」と思うとき、それにはきっときっかけがあります。きっかけはきっと漠然としたもので、言葉にするのは難しいこともあるでしょう。

例えば、ある程度運営がうまく進んでいる診療所を、個人の肩書で運営されている先生がいらっしゃるとします。この先生は、利益は診療所の方である程度出るわけだから、社会貢献の意味もあるし、ぶっちゃけ税金対策になるようなことを税理士さんも言っていたから、有料老人ホームでもやろうかな、と思いつかれます。ご承知の通り、医療法人化していれば老健とういう選択肢もあり得ますが、個人で老健をやるのはリスクがあります。本音のところは「有料老人ホームに入居している人たちの提携先診療所にすれば、診療所の運営がますます安定するし、高齢者はこれからどんどん増えるわけだからビジネスチャンスじゃないか?」といったところでしょうか。

税理士先生のおっしゃる通りにこのまま個人として土地を買い、運営会社と契約をして「有料老人ホームのオーナー」になるだけなら、さして難しいことではありません。ただ、個人としてやるにはちょっと規模が大きい事業ですし、利益率も現状では(やりようによっては)高め水準で設定可能なので、おそらく税理士先生は先生に会社を設立させて、その代表者に先生がなられたうえで契約を進めることをご提案されるでしょう。

先生はこの時点で「診療所の管理者兼院長」「提携有料老人ホームオーナー企業の代表」という二枚の看板を手にされています。

問題なのは、その先生が診療所を「医療法人化」したい、とその後願われた時です。先生のお子様は医師を目指されなかったので、これまで先生としては「このまま個人でやって、ダメなら廃業しよう」と思っていらっしゃいましたが、なんとお孫さんが地元の国立大学の医学部に合格してしまわれました。昔からよく診療所に遊びに来ていた自慢のお孫さんのために、何とかこの診療所を引き継いであげられないかという思いが強くなられます。そんな時、診療所自体の運営歴が長く、安定した経営をなさっている前提において医療法人化の申請は問題なく通ると思われますが、ここ近年の行政の流れとして「医療の非営利化」という建前が大変強くなってきています。ここに、有料老人ホーム運営会社の代表でいらっしゃるということが引っかかる可能性が出てきてしまうのです。

提携有料老人ホームの運営会社と医師派遣先である診療所は、しっかり業務提携の契約書を交わしてしまっています。契約書にはその代表として先生のお名前があり、代表取締役としての署名押印もされてしまっています。勿論、Feeは契約書通り、馬鹿にならない額が毎年やり取りされています。

このような状態になったとき、ではどこから順を追って整理してゆけば良いのかという事前のご相談に乗らせていただくこと、(この場合であれば、老人ホーム運営会社の代表権をまずは信頼できる方、一番良いのは診療所の理事にならないご親族の方に譲られ、代表権を完全に退かれてから医療法人の設立申請準備を行うというのがベストではないかと思われます。)、そしてその手続きを一連の流れとしてお引き受けするというのが、最も先生にとってロスが無く、目的に近づける第一歩なのではないかと思うのです。

またこの流れの中で申請を行うのであれば、状況を率直に都道府県と話し合いをするべきでしょう。なぜなら、都道府県によって「医療の非営利化」という言葉の解釈基準に差があるからです。もしかすると、都道府県によっては何の整理も必要なく、そのまま申請して通るかもしれません。そのあたりの感覚を探りながら先生方の目的達成のお手伝いをする、というのが、行政書士の最も大切な仕事なのではないか、と思っています。もちろん、行政手続きが終わった後、実際に先生がそれまで同様に滞りなく診療をお続けになれるよう、関係者を調整するというところまでが必要不可欠です。なぜならその業務において、行政書士は表向き書類を出したら仕事は終わりになりますが、先生は引き続き保健所や都道府県といった行政機関と継続的にお付き合いし続けなければならないのですから、その橋渡しを滞りなく行うのは当然!になるのです。

前述はただの一例です。先生方お一人お一人、状況も環境も、そして何よりその事業や医療に対する思いも異なっていらっしゃいます。それを、どの順番でどう整理してゆけば先生の思いを形にできるか、といったところに知恵を使い、そのうえで行政との交渉をして必要な書類を整えて提出する。その際、今後の診療所(病院)運営がスムーズに進むよう、行政機関との橋渡しを丁寧に行う。これが行政書士のあるべき姿なのではないかなと感じる今日この頃なのでした。